駄目男
こういうのって世の中にはいくらでもいるのよねえ。見た目は確かに中年の何とかという男優そっくりのようにイケメンなんだけれど、中身が貧しいばかりでなく、勇気もやる気も持ってない。彼が、どんな生活をしているかは凡そのことはわかるのだけれど、普通に会話していて直ぐ彼の中身が分かってしまう。そう、私との関係は、お友達の旦那様。
「Reikoさんは色々多彩な方なんですね」
「あら~そんなことはありませんよ。普通の主婦ですよ」
「ギターをお弾きになったり、インターネットをおやりになったり。そればかりか、ご自分のサイトをお持ちになっておられるそうで……」
「あら!ギターはもう弾かなくなりましたよお」
「でも家内にあなたのアレを見せてもらいましたよお」
「アレ?……奥様にですか?」
アレという言葉にはいろいろなニュアンスが込められているから、うっかり他人様に対し言うものではない。
そこで、お友達が慌てて口を挟んだ。
「いいえね、主人ったら、PC得意じゃないんですの」
わたしは内心、今頃、PCが得意だとか何とか、そいうのはおかしい、次元の違う話ではないかと思ったけれど黙っていた。昔ならそう言うことは話題になったであろうけれども、今時は、常識で、子供ですら学校やネットでのゲームを楽しんでいる時代なのだ。ケイタイが扱えるならどうってことのない話。
この日、イトーヨーカドーで偶然この友達がご主人同伴で来ていらしたので、そいじゃと言うことで店内の喫茶店に入ったのだった。
「……それにしても、あたしのサイトを見てい頂き、ありがとうございます」
あたしは、アレを見られたにもかかわらず、お礼を述べた。
「あの中のギターは、ご自分がお弾きになったものなんですよね」
あたしは心の中でなんとお粗末、聴けば分かるじゃないと、思ったれけど、それは、おくびにも出さず、
「とんでもございませんわ」
「じゃどのようにして」
と言いだしたので、もう面倒になり、
「あれは人工音楽ですよ」
「人工音楽?」
「そうですよ。パソコンでアチコチに本当のギターを弾いた音をやりとりするには大変なデーターが必要なんです。CDのようなわけには参りませんのでね。でも、少しなら、やれないことはありませんのよ。それに先に申しましたように、あたし、今は弾いていませんから」
「そうですかあ~」
彼は分かったのか、分からないのか、分からないような顔をしてあたしを見返した。私は話題を変え、
「ねえ、A子さん、グーグルアース入れた?」
「なにそれ?」
「あなた検索エンジンは主に何使っているの?」
「YAHOOよ」
「ヤフーはどうかしら、わかんないけど、あたしはグーグルなんで、大分前、コレ入れたの。地上ニ、三百メートル上空から自分の家が見られるのよお。ま、地図の航空写真みたいなもの」
「あら~じゃ、私の家も見られちゃうの?」
「もちろん」
「あら~困ったな」
彼女、あら、あらを連発した。
「洗濯物なんか、見えるんですか!」
旦那様が深刻な顔つきになって、問い詰めるような眼差しを私に投げた。
このオタンコナス、と、つい口に出かかったのを押さえ、
「それはちょっと無理ですね。でもね、真上からばかりでなく斜めの方から角度を変えて見ることも出来るんですよお」
「ええっ!」
旦那様は大仰に胸を反らした。
旦那様、仕事がお忙しくて、パソコンに興味もわかない。奥様に教えてもらえば。
この記事、もしかえして、彼ら、読むだろうか。困ったな。今度逢ったときどうしょう。
大丈夫、大丈夫、彼らは音楽趣味ではないし、一度彼女に、サイトのタイトル教えただけなんだから、お気に入りなど入れているはずもない。
……でも、大丈夫か。……ま、そのときはそのとき。イニシャルも違うし。
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