間もなく46才になる女の場合
「お前は生まれながらのふしだらな素質を持っているんじゃないの?」
と言うかも知れない。私が下手な返答をすれば大げんかになるだろう。でもわたしはそんなバカな女ではない。でも……
女が恋をして、それが成就出来るのは、一生のうち、此が最期の最後の時期だ。つまり、食品賞味期限の最後の日に当たる。街を歩けばカッコのいい年相応の男性はゴロゴロいる。私が買い物に出かけたとき、ちょっと喫茶店に立ち寄ったとする。斜め向こうに身なりの正しい端整な顔立ちの男性が新聞を読んでいて、ふと、何気なく視線が合う。私は、殊更、ふと、それをはずし、つんとした顔をする。相手が間違いなく、わたしの関心を持ったと分かった場合のことだ。
多分相手の心理は、しきりに、組んだ脚を組み替えていることで分かる。つまり欲求不満が強いということである。わたしに無視されたという心理的不安が昂じている証拠である。それこで、相手が私の話しかけるチャンスを与えることを考えればよい。必ず何か話しかけてくるだろう。じゃ、どうするのか。……簡単じゃない。……映画なんかに出てくるのを思い出せばいい。わたしは、さりげなく、右のこめかみに掌を当て、顔を少し歪めてみせる。そして、指の間から相手を様子をうかがう。
心配そうな表情が伺えたら、一段と、頭痛の度合いを少しつづめ上げてみる。更に指の間から相手を伺う。相手方立ち上がってくるまでその姿勢を崩さない。
……つづく……
| 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)



最近のコメント